スウェーデンGoteborg大学産婦人科のHelen Elden氏らは、
妊婦の骨盤帯痛治療に鍼を追加すると、痛みをより軽減できることを明らかにした。
詳細はBritish Medical Journal誌電子版に2005年3月18日に報告された。
骨盤帯痛は妊婦に広く見られ、患者の3分の1は強い痛みに苦しんでいるという。痛みは後腸骨稜と臀溝の間、特に仙腸関節近傍におこり、後大腿部に広がる。痛みの軽減を目的として行われた研究の多くは、腰背痛と骨盤帯痛を区別していなかった。しかし、これらの病気は治療も予後も異なるため、正確な診断が必要だ。特に骨盤帯痛に対して腰痛の治療を行うと、症状を悪化させる恐れがある。
今回、研究グループは、対象を骨盤帯痛に限定して、無作為割り付けの単盲検対照試験を行った。被験者は、妊娠12-31週で骨盤帯痛のある妊婦386人。ほぼ3等分し全員に6週間標準治療を行い、125人には鍼治療、131人には運動を付加した。標準治療は、骨盤ベルトの使用、家庭での運動とこの病気に関する教育からなる。鍼治療は30分間ずつ週2回行われた。運動付加群は、6週間に計6時間の指導を受け、それらの運動を日常的な体操に組み込むよう指示された。
痛みの評価には、VAS(Visual Analogue Scale)を用い、0~100点で動作に関連する痛みの強さを表した(0が痛み無し)。二次的な評価として、治療前後の骨盤帯痛の程度を治療担当者が記録した。
治療開始前と、治療終了から1週間後の痛みを比較すると、標準治療群では、朝が23から27、夕が63から58となった。鍼付加群では朝が23から15、夕が65から31と明らかな減少を示した。運動付加群でも朝が22から18、夕が60から45と痛みは軽減された。
標準治療群と運動療法追加群を比較すると、差の中央値は朝が9(95%信頼区間は1.7-12.8、P=0.03130)、夕が13(2.7-17.5、P=0.0245)だった。標準治療群と鍼治療追加群を比べると、差の中央値は朝が12(5.9-17.3、P<0.001)、夕方は27(13.3-29.5、P<0.001)で、鍼群では標準治療群に対し、朝、夕ともほぼ半減していた。差の絶対値では夕方の痛みが最も顕著に減少した。治療者による痛みの評価も、鍼治療追加群が最も良好だった。
日本では、妊娠に伴う腰痛や骨盤帯痛の管理を熱心に行う産婦人科医は少ない。痛みは妊婦にとって深刻であることを理解し、妊婦体操以外の治療法も提示、紹介すれば、医師と患者の信頼関係は強まるのではないだろうか。
(日経メディカル2005.3.25)